開催報告

信越県境エリアの魅力を探るトークイベント
開 催 報 告

※現在編集中です

まちづくりと地形・地質の関係は、NHK「ブラタモリ」で取り上げられるなど世間でも注目されるようになりましたが、日々の暮らしの中で考える機会はまだ少ないかもしれません。しかし、地域の歴史や私たちの暮らしはこの大地の上で育まれ、地形・地質の影響を多分に受けています。
第5回・第6回では、この地形・地質をテーマに取り上げ、この地域の特徴や成り立ち、糸魚川市での取組事例例などについてお話を伺いました。

VOL.5大地の形成から見た信越県境地域の際立つ特異性

収録日:2021年3月18日(木)
収録会場:上越教育大学(オンラインによるライブ・録画配信)
ゲスト:赤羽 貞幸さん(信州大学名誉教授)

赤羽先生からは、この地域の地形・地質の特徴として「関田山地の隆起」と「地すべり地帯」を挙げていただきました。
長野県と新潟県の県境に位置する関田山地は、わずか約100万年の間に1,000m以上の山々に成長し、風雨などで削られた部分を含めると2,500m以上も隆起したと推察されています。ほぼ海に近い状態からこれだけの隆起の量とスピードをもって山が作られた場所は日本有数だろうとのことです。この隆起に伴って、かつて上越市に向かって流れていた千曲川が現在のように流れを変え、日本最長の河川や日本有数の河岸段丘、日本三大渓谷などを生み出したことは驚きでした。

現在の関田山地

また、この地域には数多くの地すべり地帯があり、特に上越地方や魚沼地方、長野県北部の中山間地域での密集度は国内トップクラスとされています。地すべり地帯は水が豊富で山をなだらかに撹拌した良質な土壌であるため、米作りに適していました。明治時代の新潟県の人口は日本一だった時期もあるなど、中山間地域に多くの人々が住んでいたことは豊かに生活できる場所だったことを物語っています。現在では過疎化が進んでいる地域ですが、膨大な年月の中での大地や暮らしの成り立ちに思いを馳せ、改めて未来のことを考えると、こうした自然の力強さを感じられる地域が再び脚光を浴びるときが来るかもしれない、と期待を持たせるお話でした。<文責:事務局>

VOL.6 フォッサマグナミュージアムと世界ジオパーク

収録日:2021年7月20日(水)
収録会場:上越教育大学(公開収録およびオンラインでのライブ・録画配信)
ゲスト:竹之内 耕さん(フォッサマグナミュージアム館長)

フォッサマグナミュージアムは、1994年、国の石であるヒスイや糸魚川-静岡構造線などジオ(地質)資源に恵まれた糸魚川市につくられました。鉱物・岩石・化石や日本列島の成り立ちがわかる国内でも珍しい博物館です。

日本列島の成り立ち(ゲスト資料より)

竹之内館長からは、かつて日本列島がユーラシア大陸から分離して生まれ、今の場所に流れ着いたときに西日本と東日本が“バキッ”と割れたこと、その間の海がフォッサマグナと言われ、この信越県境エリアのほとんどはこの上に貯まった6,000mもの土砂の上に成り立っていることなど、第5回の赤羽先生からお話しのあった「地すべり地帯」や「関田山脈」の生まれた理由がわかるストーリーを教えていただきました。

糸魚川市は2009年に日本で初めてユネスコ世界ジオパークに認定され、博物館はその拠点としての役割も担っています。
世界ジオパークでは、価値ある地形・地質を守るだけでなく、教育や観光に役立てるなど地域を経済的にも豊かにしていく活動が求められます。糸魚川市では、ジオパークの視点を導入した講義や体験学習、野外活動など実施やジオパーク検定や出版物の発行、積極的な教育旅行の誘致などの地道な取り組みが進められた結果、子どもたちが地域のことに関心を持ったり、これまでほとんどなかった海外との交流が広がったり、中山間地域の高齢者がガイドになって来訪者を受け入れたりするなど、この地域の特徴である地形・地質が人々の交流を生み出し、住民の元気や愛着を高めているエピソードもご紹介いただきました。

このエリアは、糸魚川市周辺のほか、魚沼地方の苗場山麓を中心とした日本ジオパークもありますし、上越市やその周辺にも魅力的な地形・地質があるとのことです。こういったことに着目したまちづくりを広域で取り組んでいくことも大切だと感じました。
<文責:事務局>

会場(上越教育大学)での収録の様子

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