地域資源情報

14 繊 維

これらの特徴はどのようにして生まれたの?

● 生産に有利な雪国の気候

  • 麻織物の原料である苧麻は、生育期に多量の雨を必要とし、湿度が高く強風の少ない寒冷地を好む。
  • 雪国の冬期間は高い湿度が安定的に続くことから、糸の紡ぎや織りなどの工程において、糸を切れるのを防いだ。
  • 雪に晒すことで漂白効果も得られた。

● 稲作以外の仕事の必要性

  • 長野県側は河川敷や傾斜地など、稲作等に向かない地域が多く、稲作に代わる産業が求められた。そのような土地であっても、養蚕に必要な桑の葉は栽培可能であった。
  • 新潟県をはじめとする豪雪地帯では、農閑期の仕事が求められた。

● 為政者の動向

  • 戦国時代の上杉家は、麻栽培と越後上布の生産を奨励。京都への輸出を行うなど、貴重な収入の一つに。
  • 江戸時代には上杉家の会津移封に伴い麻栽培は衰退、その後生産が盛んになった同地からの仕入れにより対応するが、その後の新たな織物の開発の契機に。
  • 江戸時代の信州各藩は、養蚕を奨励した。

● 生産を支えた人材の気質

  • 織物づくりは根気のいる作業ではあり、雪国ならではの人々の根気強さが支えたといわれる。
  • 須坂市の製糸工場で生産に携わった女工の多くは、越後(新潟県)からの出稼ぎによるものだったといわれる。

● 伝統と革新の連続性

  • 麻栽培や麻織物の衰退後も、絹織物への転換、家内工業から工場制、手工業から機械化、季節生産から通年生産、織りから染めへの転換など、これまで培ってきた技術を活かしながら、技術の高度化や生産物の転換などを行い、今日に至る。

これらの特徴は地域に何をもたらしたの?

● 果樹園や工場地としての利用

  • 基幹産業ともいえる養蚕業が昭和の世界恐慌などにより衰退した後、桑畑はりんご、もも、ぶどう、栗などの果樹園に転換した。
  • 同じく製糸工場の広大な跡地には、大手精密機械工業の工場や大型ショッピングセンターなどが誘致されている。

● 他の工業への転換・発展

(以下例示)

  • 上越市の有沢製作所(東証一部上場企業)は、バテンレースの原材料である細幅織物の生産技術を活かし、フィルム生産などへと転換して発展。
  • 須坂市の蚕糸業からの投資により水力発電所が建設され、その電力によって上越市に肥料製造会社が立地し、現在の信越化学工業の起源に。

● 特徴的な街並みの形成

  • 須坂市には、製糸業などで栄えた時代の蔵が数多く残されている。明治初期で3,000人の人口が、昭和初期には2万人超となり、急速に都市化が進んだため、巨大迷路の街ともいわれる。

※その他、昭和初期の満州開拓団や満蒙開拓青少年義勇軍に対し、長野県は国内で最も多い人数を送り出しているが、この一因には蚕糸業衰退もあったとされる。